文:名畑 政治 / Text: Nabata Masaharu
「SDGs(Sustainable Development Goals)」、つまり「持続可能な開発目標」という言葉に象徴されるように、サステナビリティ(持続可能性)を意識した製品の開発や使用が、今、世界で注目されている。
その中にあって、外部からのエネルギーを用いず、小さなぜんまいの作動で正しい時刻を表示し続ける機械式時計は、まさにサステナビリティの流れに沿ったプロダクツである。
セイコーが世界に誇る高級腕時計「グランドセイコー」には、ぜんまいのみで駆動する機械式モデルに加え、世界に先駆けてセイコーが開発に成功した機械式とクオーツ(電子制御)のハイブリッドともいうべき「スプリングドライブ」がある。
この「スプリングドライブ」は、1999年にセイコーが手巻き方式の最初の製品を発売。その5年後の2004年には自動巻きの「スプリングドライブ」ムーブメントを搭載したグランドセイコーが登場し、現在は機械式やクオーツと並んでグランドセイコーのひとつの柱となっている。
そのシステムは、巻き上げたぜんまいのパワーで輪列を駆動させて針を動かすと同時にローターを回転させて発電。その電力で水晶振動子(クオーツ)と電子回路を駆動することで、クオーツ時計と同等の正確さでローターの回転と輪列の動きを制御し、正確な時刻を表示するものだ。つまり「スプリングドライブ」とは電池や通常のモーターに頼らない自己完結型の極めてエコロジーな時計駆動と制御のシステムである。
さらに「スプリングドライブ」は製品の製造段階において、フロンやトリクロロエタンなどの溶剤の使用がなく、水銀やカドミウムなどの有害物質を含まず、修理などの対応が製造中止後7年以上にわたり整っており、点検・修理の体制が整備されていることなどが評価され、公益財団法人日本環境協会が実施するエコマーク認定商品となっている。