天才時計師の発明と着想を現代に蘇るブレゲのクラシック・コレクション

文:名畑 政治 / Text: Nabata Masaharu

「時計の進化を200年早めた」といわれる天才時計師。それが「ブレゲ」というブランドの創業者であるアブラアン-ルイ・ブレゲその人である。1747年にスイスで生まれたブレゲは、若くしてフランス・パリに移り、18世紀後半には自らの工房を開き、数々の歴史的な発明や傑作タイムピースを製作。ナポレオンやマリー・アントワネットなど王侯貴族をはじめとして、数多くの著名人や科学者を顧客に抱え、18~19世紀の時計および科学技術の最先端を牽引する偉大な存在へと上り詰めたのである。

 そのブレゲの発明は、「ブレゲ数字」と呼ばれる独特な書体のアラビア数字インデックスや、鋭利な先端とオフセンターに穴を持つアップルハンド(針)の「ブレゲ針」など意匠に始まり、手作業で緻密な彫り込みを実現したギヨシェ装飾、ケースの外側に立体的な一本の針を設置し、指で触ることで時刻を読み取る「モントレ・ア・タクト」、注文時に価格の1/4を支払うという予約支払い制を導入した「スースクリプションウォッチ」など、新しい装飾技法や時刻表示機能、さらには販売戦略に至るまで斬新な着想を現実のものとすることで、まさに200年は先を行く時計を世に送り出したのであった。

 このブレゲの発明や着想を現代に引き継いで製作されるのが、今日のブレゲの数々の作品。その典型がブレゲのクラシック・コレクションである。それでは早速、懐中時計の美とエレガンスが今日に蘇らせた傑作コレクションをご堪能いただきたい。

- おすすめモデル -

品格漂うオフセンター表示の極薄カレンダー・ウォッチ

 1823年頃、アブラアン-ルイ・ブレゲが晩年に製作したという複雑機構装備の懐中時計「No.3833」にインスピレーションを得て開発された個性あふれる文字盤を持つ「クラシック 7337」は、手作業による緻密なギヨシェ装飾の文字盤に日付と曜日、月の満ち欠けを示すムーンフェイズインジケーターを表示するブレゲらしさが満載のカレンダー・ウォッチである。

 

 

 文字盤の中心軸をずらして設置された「ブレゲ針」と呼ばれる時分針と、そのチャプターリングには繊細なローマ数字のインデックスを配置。そのリングの中には、これもまたオフセンターのスモールセコンドが置かれ、懐中時計の時代から連綿と継承されるブレゲ・ウォッチの美を体現する。この文字盤の上部に置かれたムーンフェイズインジケーターには、ラッカー仕上げの空を背景にして、立体的に仕上げられた月が移動して満ち欠けを表現する。そして2時位置の窓で日付を、10時位置の窓では曜日を表示する。

 搭載されるムーブメントは、極薄型のCal.502.3. QSE1。ギヨシェ装飾が施されたゴールド製のフルサイズ・ローターを搭載しながらも、オフセンターにセットすることで極薄化を実現するという、これもまた実にブレゲらしい創意に満ちた傑作キャリバーである。

- MODEL DETAIL -

  • クラシック 7337
    税込 7,634,000円

    品 番 7337BR/12/9VU
    ムーブメント 自動巻き
    パワーリザーブ 45時間
    ケース素材 18Kローズゴールド
    ケース径 39mm
    防 水 3気圧 日常生活防水

 

アヴァンギャルドな雰囲気さえ漂う芸術的なムーンフェイズ搭載モデル

 18~19世紀の懐中時計の時代に技術が確立されたガラス質の釉薬を金属のプレートに塗布し、800℃以上の高温で焼成する“グラン・フー”エナメルの文字盤を備えるこのモデルは、センターの時・分・秒の針に加えて、12時位置にムーンフェイズインジケーター、そして3時のインデックスから伸びた長い針によるゼンマイの巻き上げ残量を示すパワーリザーブインジケーターをも装備する複雑機構搭載モデルである。

 

 

 そのベースとなったのは1785年販売の「No.92」であるといわれている。エナメル文字盤やブルースチール仕上げの針、「ブレゲ数字」と呼ばれる特徴的なアラビア数字のインデックスなど、古典的かつ伝統的な技法を駆使しながらも、ムーンフェイズやパワーリザーブの大胆な表示システムが、アバンギャルド(前衛的)な雰囲気さえ感じさせるエレガントにして芸術的なタイムピースへと、このモデルを昇華させている。

- MODEL DETAIL -

  • クラシック 7787
    税込 5,280,000円

    品 番 7787BR/29/9V6
    ムーブメント 自動巻き
    パワーリザーブ 38時間
    ケース素材 18Kローズゴールド
    ケース径 39mm
    防 水 3気圧 日常生活防水

 

永遠のクラシックを体現する高貴なるシンプル・モデル

 時・分・秒という3本の針による時刻表示のみというシンプルさを極めたモデルだが、ブレゲの手にかかると、これほどまでに高貴でエレガントな雰囲気を醸し出すことができるという、まさにブレゲ・スタイルの典型にして永遠のクラシックとも呼ぶべき傑作タイムピース。文字盤はゴールドのプレートに手作業による「クル・ド・パリ」と「パニエ」モチーフを組み合わせたギヨシェ装飾を施し、外周部にきわめてセンシティブなローマ数字インデックスを配置した気品あふれる仕様。このバージョンに加え、ホワイトの“グラン・フー”エナメルに、ブレゲ自身が発明した典型的なブレゲ数字のインデックスとブルースチール仕上げのブレゲ針をセットしたバージョンも用意されている。どちらのバージョンもケースは18Kローズゴールドとホワイトゴールドの二種から選べる。

 

 

 特にギヨシェ文字盤のバージョンは、1794年頃、初代ブレゲが最初に完成させた永久カレンダー付きの自動巻き懐中時計「No.5」が下敷きとなっていることは明白である。ムーブメントはオフセンターにギヨシェ装飾入りのフルサイズ・ゴールド製ローターを装備する極薄型のCal.502.3 SDである。

- MODEL DETAIL -

  • クラシック 7147
    税込 3,828,000円

    品 番 7147BB/12/9WU
    ムーブメント オフセンター自動巻き
    パワーリザーブ 45時間
    ケース素材 18Kホワイトゴールド
    ケース径 40mm
    防 水 3気圧 日常生活防水
  • クラシック 7147
    税込 3,729,000円

    品 番 7147BR/12/9WU
    ムーブメント オフセンター自動巻き
    パワーリザーブ 45時間
    ケース素材 18Kローズゴールド
    ケース径 40mm
    防 水 3気圧 日常生活防水
文:名畑 政治
Text: Nabata Masaharu


1959年、東京生まれ。80年代半ば、フリーライターとして取材活動を開始。90年代からはカメラ、時計、万年筆、ファッションなどを題材に、メンズ誌・情報誌で取材・執筆。94年から毎年、スイス時計フェア取材を継続中。2009年からは時計専門ウェブマガジン「Gressive」の編集に携わり、2015年、Gressive編集長に就任。著書に「オメガ・ブック」、「セイコー・ブック」、「ブライトリング・ブック」(いずれも徳間書店刊)、「カルティエ時計物語」(共著 小学館刊)などがある。
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